人生において、大きな選択に迫られることが何度かあります。学生であれば進学時や就職活動。社会人になってからは異動の打診時や勤めている会社に経営上の変化、あるいは人生のキャリアパスを考えた時。その決断は自分自身で行うものですが、当然他の人と相談することもあると思います。相談というのは不思議なもので、本来は選択をする上でのヒントとするための行為ではありますが、時には逆に障害になることがあります。特に身近な人が相手になると、「相談」のつもりが何かを「説得」されてしまう危険性があるのです。ですから、自分自身でコアとなる考え方を相談よりも前に整理しておくことが大事です。
よく知られているのが「キャリア・アンカー」と呼ばれるものです。これはエドガー・シャインによって提唱されたキャリア理論の概念です。「アンカー」とは船の錨のことを指し、キャリア・アンカーとはキャリア選択の際の価値観や欲求の最もコアな部分を指します。これは実は誰しも持っていますが、意識されていないことも多々あります。自分自身で整理する時、通常は最も大切なものを考えることが多いのですが、それが難しい場合は、逆転の発想で、「最も譲れないもの」を考えるのも良いでしょう。譲れないものが分かれば自ずと大切なものが自己認識できます。ご自身のキャリア・アンカーをしっかりと認識できている状態で「相談」を行えば、相談相手との間に齟齬を作り出すことなく、有意義なヒントを得られることでしょう。