昭和の時代は、大学病院や市民病院のような比較的規模の大きな病院で治療を受けると、同じ病院ないの受付にほど近い窓口で処方箋を薬剤師にわたし、薬剤の交付を待っていました。ところが、時代が平成に変わった頃、「医薬分業」が国の施策として推進され始めると、診療報酬や調剤報酬などの改定が刺激となって、薬剤は受診した病院ではなく外の保険薬局でもらう仕組みである院外処方に変わって行きました。「おくすり手帳」に代表されるように、薬の専門家である薬剤師が、どの病院で処方されたものであっても総合的に服薬指導ができ、医薬品の適正使用を推進するというのが建前でありました。実際、そのような側面で上手くいった部分はあるのですが、院内処方と比較した時に実は患者の金銭的負担が高まったり、お年寄りや歩行が難しい患者がわざわざ外の離れた薬局まで歩いていかなければならないなど、受益者となるべき「患者目線」から離れてしまった負の部分もかなり散見されています。
来年2018年(平成30年)は調剤報酬改定に伴って「かかりつけ薬剤師」の条件が緩和されます。かかりつけ薬剤師は2016年から導入された制度ですが、まさしく患者専門の薬剤師で、患者の求めがあれば24時間いつでも薬剤を交付するべき等、厳しい条件がついており、薬剤師の免許を持っていれば誰もがなれるわけではありません。したがって、患者数に対して相対的に不足しており、ほとんど普及してないのが実情です。次回改定では「常勤」などの条件が緩和される見通しで、その結果絶対数の増加が見込まれます。国は地域包括ケアにますます力を入れていくことが予想されることから、単に薬剤を薬局で交付するだけでなく、地域医療を念頭に置いた営業施策に変換を図る必要性が高まっています。