インストラクショナルデザイン(ID)は鈴木(2004)によると、「研修の効果と効率と魅力を高めるためのシステム的なアプローチに関する方法論であり、研修が受講者と所属組織のニーズを満たすことと目指したものである。」とされています。某大手飲料メーカーがID部門をきちんと作るくらいに、教育方法論としては米国ではかなり認知されています。一方で、我が国でも10年ほど前から比較的拡がりを見せるようになり、トレーニング講座やセミナー等も増えてきました。そのような講座を教育担当者が受講することは大変有意義なことです。多くの受講者は実務でもIDを活用していこうと考えます。この先に落とし穴があります。実際に使い始めたIDは正しく使えているかを検証出来ていないことがあるのです。

研修部門が複数の人員で構成されている場合、教材やテストを相互評価することができますが、一つ問題があります。それは構成員はお互いの情報をある程度知っているため、客観的評価の軸がやや主観的評価に偏ってくることがあり、見落としが発生する危険性が高まります。この問題をクリアするために有用なのは、自部門以外の評価を加えることです。実際にその教材を使うであろう人でも良いですし、外部の人でも良いでしょう。これを形式的評価と言い、Plan-Do-SeeのSee(PDCAならC)にあたる部分です。自分たちが出来ている、間違っていないと思っていることでも、第三者は気づいてくれます。その目線を遮ってしまうと、教育担当者自身の成長が止まり、結果的に悪い教育設計を繰り返すことになってしまうでしょう。